表現の世界で学ぶ人たちへ
「長所はなんですか?」と聞かれたら困る人は多いでしょう。長所も短所もあなたと言う一人の人間を形作る大切な部分です。
しかし自分自身を「商品」として、身に付けた技術と感性でお仕事をしていく表現の世界では「商品価値=長所」とされることがあるため、長所を発揮すること強く求められます。
一般的な価値観とは少し違う世界で自分の長所探しに迷う人たちがいます。特に表現を学んでいる期間には出来ないことが多く自分の欠点ばかりが目について悩む人も多いはず。
表現の世界で長所を印象付けるには、実はコツがあるのです。
言葉の捉え方を整理してより良い形で長所を伝えていく方法を手に入れましょう。
「商品」として必要なものとは
表現の世界で学んでいる人たちは「あなたの商品価値を教えてください」と同義語として「自分らしさをアピールして下さい」「あなたの長所をアピールしましょう」と要求される傾向があります。指導する側の「商品」として自覚を持ってほしいという想いの現れで、常に高いプロ意識を持って頑張って!といった意味も含まれています。
表現の基礎的な部分を身に付けようと試行錯誤し、まだまだ自信も無い中で投げかけられる「自分らしさ」や「長所」と言う言葉は、多くの人の不安の元になり努力していく気力も奪いかねないのも事実です。前向きに頑張ってほしいという意味のアドバイスのはずなのにとても切ない状況ですね。
「長所」というキーワードを理解しよう
頻繁に使われる「自分らしさ」や「長所」というキーワードの捉え方を整理していくことが出来れば、表現を学ぶ期間をより前向きに有意義に過ごすことができるはず。
「長所をアピール」と言われたら「自分の良いところはどこだろう」と懸命に探しますが、実力が伴わないことは日々の訓練の中で突きつけられているため、自分がアピールできる部分が見つからないという具合に悩みが深まることも。
今回は自分の強みが見つからない状態から抜け出して、現状の自分の良い部分を効率よくアピールしていく方法をお伝えしていきます。
「自分らしさ」の受け止め方に関しては別記事で紹介しています。
⇒気持ちが楽になる「自分らしさ」の捉え方
現状を理解する
「商品価値=魅力」と考えれば短所も弱点も魅力として認められることはあります。しかしそう認められるためにはまず表現の技術が一定レベルを超えることが要求されます。
それまで技術的弱点がある状況は「商品」としてのマイナス要素と受け止められてしまいます。まずは表現の技術レベルを上げる努力を最優先して下さい。
また自分の良い部分を探すことだけにフォーカスしすぎると、本来「商品」として求められる技術レベルとの実力差を見誤る可能性があるので注意しましょう。表現を学んでいる期間は自分がいま「出来ていること」と「出来ていないこと」の両面を冷静にしっかり理解することが重要です。
効率よく長所を発揮する方法
現状が理解出来たら次のステップに進みましょう。
弱点は表現の技術が一定レベルを超えるまでマイナス要素。評価を下げてしまう弱みが伝わらなければ、出来ている部分だけを強調することができる。大切なポイントです。
表現の世界でも技術レベルの解りやすい「声のお仕事」を例に説明していきます。
目をそむけず弱点を認識する
いま出来ないことが多いからこそ弱点に目を向けて正しく認識する。
台本や原稿を読むような「声のお仕事」で求められる最低条件は「書かれている内容をしっかり伝えること」です。文字を声で表現する基礎として重要なのが、聞き取りやすい滑らかな発音(滑舌)、日本語としての正しいアクセント、聞きやすいテンポの3要素です。要素のどれが欠けても最低条件を満たさない可能性があるので、どこが自分の弱みになるのかを認識します。自分にいま足りない技術としっかり向き合うことが早道です。
弱点を隠すことで長所が際立つ
認識した弱点が目立たないように気を付けると良いところだけが伝わる。
つぎにマイナス評価となる弱点を最大限にカバーすることを意識します。意気込み過ぎて早口になり発音もままならず訛ってしまったら「書かれている内容をしっかり伝える」という最低条件を満たせません。
冷静にゆっくりテンポでひとことひとこと大切に確実に表現していくように心がけます。すると弱点は目立たず「丁寧に伝えた」という事実だけが相手の印象に残る。無理に出来ることを誇張しなくてもあなたの出来たことだけが「長所」として伝わるという具合です。
隠すことは悪いことではない
良いところを伝えるには弱点を隠すことに集中する。隠すことには意味がある。
とはいえ表現の世界に身を置く以上「こう読みたい」と思うあまり「気持ち」を優先させてしまうことがあります。
弱い部分を隠すなんて表現することから逃げているようだと罪悪感を持つ人もいますが、あくまで表現のレベルが一定の水準を超えるまでのこと。しっかりとした技術が身に着けば「気持ち」に技術が伴って表現を自在に操れるようになります。それまでは評価を下げる要素を極力減らすために弱点を隠すのも方法のひとつと開き直るのがオススメです。
弱点を隠すことで得られる最大のメリット
表現の世界で努力し続けていれば長所を発揮するチャンスが何度も訪れます。そのたびに弱点と向き合いカバーすることを心がけていると素晴らしい効果が得られます。
自分の成長を理解できる
あんな風になりたいと上ばかりを見ていると足元を見ることを忘れがちになります。自分の弱みを認識しカバーしていくという作業は、足元を見て一歩ずつ前に進んでいくことに等しく憧れの対象に向かって着実に近づいていきます。
新たなチャンスを目の前にして現状を再確認してみると、出来ていることが増え出来ないことが減っている事実に必ず気づけます。常に両面を確認する習慣が身に付くことで自分の成長を理解する力も増していきます。
表現の幅が広がっていく
自分の成長を理解する力が身に付くと自分の表現に確信が持てるようになります。
いまはまだ出来ないことはあるけれど最優先で身に付ける努力は怠らない。ここぞという時は弱点を上手に隠して、良い部分だけを効率よく相手に印象付け評価を得ることが出来るようになります。
日々の頑張りで出来ないことはどんどん減っていき、いつしか「商品」となるためのレベルを超えるときが訪れます。隠すべきことが無くなると表現の幅が広がります。
さまざまな表現の技術が身に付くことで心のまま自由に表現が出来るようになるのです。
まとめ
表現の世界で学ぶ人たちにとって、あなたを成長させようとアドバイスしてくれる相手のからの言葉は、真っ向から受け止めて立ち向かわなければならないもののように感じてしまいがちです。
上達するためのヒントであることは確かですが、けっしてあなたを縛るものや立ちはだかる壁ではありません。
自分の心を惑わせるキーワードも捉え方を変えれば実力アップのための大切な言葉に変わる。柔軟な思考を手に入れれば表現の豊かさにもつながるのです。実践してみましょう。
[st-card id=1300]