日本には昔話や伝説などで良く知られる人物が存在します。物語の登場人物はヒーローであったり、あるいはヒールであったりといろいろあります。その中でも人気のあるものは、その後に能や歌舞伎、アニメなどにもなっていたりします。
実は日本では、このような物語の登場人物が神様として敬いの対象となっていることもあるのです。
今回は物語の中の人物が祀られている神社を紹介します。
浦島太郎の神社|浦嶋神社(うらしまじんじゃ)
浦嶋神社は京都府与謝郡伊根町に鎮座しています。
浦嶋神社は古くは「筒川大明神」とも呼ばれており、ご祭神として日本書紀に登場する「浦嶋子」が祀られています。
浦島子は実在した人物で、丹後の国に住んでいました。その後海神の娘と結婚し、竜宮で暮らしたと記録されています。この物語が昔話にもある浦島太郎の原型とされています。
神社には「玉手箱」が奉納されていたという記録もあるそう。神社の本殿は室町中期の建築様式を残し、重要文化財にも指定されています。
桃太郎|吉備津神社(きびつじんじゃ)
吉備津神社は岡山県岡山市にある神社。吉備国の総鎮守として古くから信仰される神社で、創建は神話の時代にまでさかのぼる古社となります。ご祭神は吉備津彦命。
吉備津彦命は、崇神天皇の命で吉備国を平定するために派遣された皇族で、温羅という鬼神を討伐した伝説が残っています。このの物語が、後世の桃太郎伝説のお話になったと考えられています。
吉備津神社は建築様式が独特で吉備津造の本殿と拝殿は国宝に指定されています。また、特別なご神事である鳴釜神事という釜の音で占いをするという風習が現在も残っています。この神事は温羅の霊を鎮めるために始まったと伝えられています。
牛若丸(源義経)|鞍馬寺
鞍馬寺(京都市左京区)は、770年に鑑真和上の弟子・鑑禎により創建されたと伝えられるお寺。京都北部・鞍馬山の中腹に位置し、山岳信仰と密教の融合した修験の霊場として発展してきました。
牛若丸と呼ばれた源義経が幼少期をこの地で過ごしたとされる話が残っています。源氏が没落した後、牛若丸は母と別れて鞍馬寺に預けられ、ここで修行をし、天狗に剣術を教わったという伝説があります。現在でも牛若丸と天狗の像が多く、義経を信仰する人々にとっての聖地ともなっています。
かぐや姫|富士山本宮浅間大社
富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)は、富士山を御神体とする全国約1,300社の浅間神社の総本社。創建は古く、垂仁天皇の時代(紀元前29年〜70年)とされます。主祭神である木花咲耶姫命は、富士山の女神で、美しく儚い命の象徴とされています。
この木花咲耶姫命の物語が、のちに『竹取物語』のかぐや姫のモデルとなったという説が存在しています。特に、物語の最後でかぐや姫が不老不死の薬を天皇に残して、それを富士の山で焼かせたという場面は有名です。これが、「富士山=不死山(ふしのやま)」の語源になったとする俗説もあります。
浅間大社自体では神様として直接「かぐや姫」を祀ってはいませんが、富士山信仰と竹取物語の終焉の地として縁があり、周辺地域ではその伝承が残るスポットも多く残っています。
一寸法師|少彦名神社(すくなひこなじんじゃ)
一寸法師とゆかりのある神社としては大阪府大阪市の少彦名神社があります。ご祭神として、少彦名命(すくなひこなのみこと)の他、中国から伝来した農業と医薬の守護神である神農炎帝(しんのうえんてい)が祀られています。
こちらの少彦名神社は地元の方に「神農さん」と呼ばれており、正式には1780年に当時の薬屋たちによって建立されました。少彦名命も日本において医薬と農業の神という共通点もあったのもあり、合祀されていると推測されます。
また、少彦名命は、日本神話において掌に乗るほどの小さな姿で海を越えてやって来た知恵の神として描かれます。この伝説が一寸法師と多くの共通点があることで、モデルであると考えられています。
また、神社が位置するのは大坂は『御伽草子』版の一寸法師が活躍した舞台と一致。一寸法師は堺または河内が出身で、京都へ旅立って成功を収めるという起点でもあります。
金太郎|金時神社(きんときじんじゃ)
金時神社(神奈川県南足柄市)は、源頼光の家臣・坂田金時(幼名:金太郎)を祀る神社。同様にもある通り足柄山のふもとに鎮座しています。
坂田金時は平安時代の実在の人物で、その怪力と忠誠心が伝説化し、「金太郎」として親しまれるようになりました。
神社の創建時期は不明ですが、江戸時代にはすでに「金太郎信仰」が存在してたと記録が残っています。健康・子どもの守り神として人気を博しました。境内には「金太郎のまさかり」や「産湯の井戸」など伝説ゆかりの遺物が残され、参拝者が多く訪れます。