日本人は古くから自然の中に神様を感じて暮らしてきました。特に山には神様が住むところであると考えられてきています。
何事のおはしますかは知らねども
かたじけなさに涙こぼるる西行
平安時代の僧侶であり歌人でもある西行は上のような歌を残しています。あらゆるところに感じる大きなものを詠んだものとして有名なものです。
全国的に知られた霊山はもちろんですし、近くにある山々も神々の鎮座する場所として崇拝の対象となっていたのです。
今回は特に霊的な力が強いとされている霊山の神社についてお伝えします。
かつては登れなかった霊山
昔の人々は地域によって違いはあるものの、山というのは死者の霊が赴くところとされていました。
山に登った霊は、最後はひとつとなって子孫を守る祖霊、祖神となります。
こうした神様がいる場所として崇拝されていることから、山は神聖な場所としてなるべく神域に入らないようにされてきたのです。
時代が進んで、仏教が日本に伝来し山が修行場所になっていったのです。役行者が1000日の修行をしたというのが、7~8世紀ころですから、人々の考え方もこれくらいから変わってきたのかもしれませんね。
神社が建てられ始める
山岳信仰が活発になると、寺社が霊山にも建てられるようになってきます。中世になって、さらに仏教徒や修験道の方以外の一般の人たちにも徐々に開かれ、開発が進められていきます。
霊山にある神社の代表は?
霊山と呼ばれて崇敬されている山にある有名神社を紹介します。
富士山本宮浅間大社(富士山)
富士山本宮浅間大社は静岡県富士宮市にある、浅間大社の総本宮となる神社です。奥宮は富士山の山頂付近に鎮座されます。
絶世の美女とも言われる木花開耶命(コノハナサクヤヒメノミコト)を主祭神として祀っています。
現在では、安産の神さまとして知られ、女性の参拝者に人気があります。元々は富士山の鎮火を祈念されたといいます。
白山比咩神社(はくさん)
白山比咩神社は、全国三千余社の白山神社の総本宮であり、加賀の国の一ノ宮でもある神社。霊山としても知られる白山を御神体とする白山信仰の総本社でもあります。
縁結びのご利益があるとして、「白山さん」と呼ばれ親しまれています。
山頂にある奥宮はもともとは本宮だったもので、養老元年(西暦717年)に泰澄むが建立した歴史あるものになります。
月山神社・出羽神社・湯殿山神社(出羽三山)
出羽三山には、古くからの修験道の道場が存在していました。出羽三山とは羽黒山、月山、湯殿山の総称となります。神仏習合の権現を祀る修験道の山でした。
現在では、月山神社、出羽神社、湯殿山神社が存在し、羽黒山は稲倉魂命、月山は月読命、湯殿山は大山祇命、大国主命、少彦名命の三神が祀られます。
熊野那智大社(那智山)
熊野三山のひとつ那智山にある
山が信仰対象ということで範囲も広い
富士山や白山のように霊山を信仰の対象としているために、広範囲にわたって神社や仏閣が建てられてることもあります。
富士山の場合には、山頂付近にある浅間大社奥宮をはじめとして、山梨県側には北口本宮冨士浅間神社があったり、東側にも須走登山道の起点となる場所に、富士山東口本宮冨士浅間神社があったりします。