龍口明神社(神奈川県鎌倉市)鎌倉で一番古いお社は江ノ島と合わせて

龍口明神社とは?

神奈川県鎌倉市に鎮座する龍口明神社(りゅうこうみょうじんんしゃ)。

仏教が伝来した552年(欽明13年)に創建されたと伝わる、数ある鎌倉の中の神社のなかでも最古となるお社なのです。

江ノ島の弁天さまに叱られて改心した龍神が由来となって創建されたお社には、神社としては意外な歴史がありますよ。

改心して江ノ島の弁天さまの夫となった龍神が宿るお社。今回は龍口明神社の解説です。

龍口明神社の御祭神

玉依姫命(タマヨリヒメノミコト)
五頭龍大神(ごずりゅうおおかみ)

龍口明神社に関する神話は?

玉依姫命のご利益は、縁結び、子授け、安産となります。

初代神武天皇じんむてんのうのお母様で、大綿津見神(オオワダツミノカミ)の娘です。

玉依姫命の姉・豊玉毘売命(トヨタマビメノミコト)は、山幸彦(やまさちひこ)として知られる火遠理命(ホオリノミコト)と結婚して身ごもりました。

ところが、出産のときに産屋うぶやの中をのぞいてはいけませんと言われていたのに、夫の火遠理命は中を見てしまい、妻の正体がサメだと知ってしまいます。

怒った豊玉毘売命は、生まれたばかりの子・鵜草葺不合命(ウガヤフキアエズノミコト)を置いて海の底に帰ってしまいました。

それでも置き去りにした我が子が気になった豊玉毘売命は、自分の代わりに育ててほしいと妹の玉依姫命を地上に送ります。

やがて、成長した鵜草葺不合命は、玉依姫命を妻に迎え、神武天皇を含む4人の子供に恵まれました。

五頭龍大神の神話について

もう一柱の御祭神である五頭龍大神のご利益は、国家安泰・心願成就などです。

五頭龍大神は、かつて鎌倉にあった湖に住んでいた5つの頭をもつ龍で、もともとは、天変地異を起こして地域の住民を苦しめていた悪い龍だったのです。

村の長が16人の我が子を暴れる五頭竜に生贄として捧げたことが由来となって、昔、このあたりの地名は「子死越(こしこし)」と呼ばれていました。

地名の「こしこし」という音(おん)は、現在の地名「腰越こしごえ」に引き継がれています。

ある日、江ノ島に弁天さまが住まうことになり、その美しさに一目惚れした五頭竜は結婚を申し込みます。しかし、それまでの人々に対する悪行三昧を理由に断られてしまいました。

五頭竜はそれまでの悪事を心から反省し、これからは人々を守ると弁天さまに誓ったのです。

その誓いによって晴れて弁天さまと結婚した五頭竜は山となり、人々を災害から守る守護神となりました。

龍口明神社の見どころ

手水舎

御神木

龍口明神社の歴史は?

仏教が伝来した552年(一説によれば538年とも言われています)、山と化して人々を災害から守る様になった五頭竜を祀ることにします。

人々は五頭竜の口にあたるところにお社を建て、白鬚明神しらひげみょうじんと呼びました。

これが龍口明神社の始まりだと伝えられています。

723年(養老7年)に、江ノ島の岩窟で修行していた泰澄大師たいちょうだいし慈覚大師じかくだいし
は、夢に現れた神々を木像に掘り上げました。

そのうちの弁天様を江ノ島の岩本院(江ノ島の弁天さまの別当寺)に、玉依姫命と五頭龍大神の2体を白鬚明神に納め、さらに龍口明神社と名付けたのです。

この2体の神像は、龍口明神社のご神体となっています。

1923年(大正12年)の関東大震災でお社が全壊し、1933年(昭和8年)に改築・再建されました。

1978年(昭和53年)、住人の要望で龍口明神社は、五頭竜の胴にあたる現在地に移転されましたが、古いお社は現在も大切に保存されています。

 

龍口明神社が遷座された理由

現在地に移転する前の龍口明神社は、龍口(たつのくち、現在の藤沢市片瀬)というところに建てられていました。

五頭龍大神(ごずりゅうおおかみ)の口にあたる場所なので、龍口と呼ばれるようになったところです。

ところが、創建から時代が下って鎌倉時代になると、龍口が刑場として使われるようになってしまったのですね。

日蓮上人(にちれんしょうにん)の処刑寸前に、江ノ島から光の玉が上がる奇跡が起きたことで、助命された有名な龍ノ口法難(たつのくちほうなん)も、この刑場で起きた出来事でした。

また、1335年(建武2年)に、中先代の乱(なかせんだいのらん)を起こした北条時行(ほうじょうときゆき)が、足利氏に処刑されたのもこの刑場だったと伝えられています。

弁天さまと結婚し、人々を守る存在となった五頭竜の目と鼻の先が、刑場として用いられたことに、地域の人々は五頭龍大神(ごずりゅうおおかみ)の祟りが起きるのではないかと恐れるようになりました。

やがてその恐怖は、お社を移転させようという気持ちに変化していきます。

しかし、その住民の願いがかなったのは、鎌倉時代に刑場として用いられ始めてから、800年以上経った1978年(昭和53年)になってからのことだったのです。

関東大震災でもとのお社が全壊したときに遷座できなかったのは、何かしら社会的・経済的な事情があったのでしょう。

800年以上、目と鼻の先が汚れた土地となったことを、五頭龍大神(ごずりゅうおおかみ)が我慢していたのは・・・江ノ島の弁天さまになだめられていたのかもしれませんね。

龍口明神社へのアクセス

公共交通機関を利用する場合

湘南モノレール西鎌倉駅下車、徒歩10分、
もしくは西鎌倉駅前より江ノ電バス新鎌倉山循環乗車、バス停龍口明神社前下車、徒歩すぐ

車を利用する場合

横浜横須賀道路朝比奈IC下車、県道204号経由、新鎌倉山入口交差点左折、約40分

まとめ

神奈川県鎌倉市に鎮座する龍口明神社。

仏教が伝来した年に創建された、鎌倉で一番古いお社です。

人々を苦しめた五頭竜が改心し、人々を守る山となり、その口にあたるところに創建された龍口明神社は、創建以来、氏神として地域の人々を守り続けていました。

ところが鎌倉時代に、お社のすぐそばが刑場として使われるようになってしまい、人々は祟りを恐れ始めます。

人々の遷座の願いが叶えられたのは、鎌倉時代から800年以上も経った、昭和になってからのことでした。

五頭龍大神と江ノ島の弁天様はご夫婦ですから、龍口明神社に参拝したら、江ノ島の弁天さまにもご挨拶しましょう。

江ノ島に行ってもカップルが別れないかも

江ノ島の弁天様にカップルでお参りすると別れてしまうという噂を聞いたことがありませんか?

カップルに弁天様が嫉妬するからだとも言われていますね。

ただ、龍口明神社で五頭龍大神にご挨拶してから江ノ島の弁天様をお参りすると、この言い伝えを回避できるとか。

是非、合わせて参拝しておきましょう。

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