誰かと何かを話す時お互いが言葉を尽くして話すことが出来れば解りあえる可能性は高いでしょう。自分は言葉を尽くして伝える努力が出来ても、同じように相手が努力してくれるとは限らない。双方の意志が滞りなく通じることを「意思疎通できる」とは言いますが、なかなか難しいことだと誰もが知っています。
同じ言語をしゃべっているのだから、自分の考えていることを上手に伝えたい、相手の言っていることをしっかり理解したい。快適なコミュニケーションをとりたいと思うのは当たり前のことです。そこでオススメしたいのが「翻訳」という考え方。
意思疎通のための「翻訳」
「翻訳」とは本来「他の言語に置き換える」作業を言いますが、今回は「相手の言葉を自分の受け止めやすい言葉に置き換える」または「自分の言葉を相手の受け止めやすい言葉に置き換える」作業のことを言います。
例えば「元気」と聞いてどんなイメージを持つかは人によって違います。「健康」「明るい」「平常通り」「はつらつ」「平和」など受け止め方は人それぞれ。
日本語は1つの言葉でも沢山の意味を含んでいます。同じ言葉でも相手の意味するところと自分の意味するところが違っていたら本当の意味での「意志疎通」ではないことは言うまでもありません。
翻訳① 相手の言葉を自分の受け止めやすい言葉に置き換える
翻訳が出来ると相手の言葉を的確に理解することが出来ます。特に、仕事の場面で経験値の高い人からの指示はどうしても言葉通りに受け止めてしまいがちますが、経験値も知識も違うのですから言葉に含む意味が違うのは当たり前なのです。
自分に投げかけられた言葉の意味するところを、自分がいつも使っている解りやすい言葉に翻訳できれば、確信を持って行動することができるようになります。
翻訳② 自分の言葉を相手の受け止めやすい言葉に置き換える
翻訳が出来ると自分の伝えたいことをしっかり相手に届けることが出来ます。強い想いをこめてしゃべったからといって必ずしも相手に伝わるわけではありません。むしろ想いが強すぎると言葉選びが独りよがりになり、ちっとも相手に通じない状況は多くの人が経験しています。伝えたい言葉があるときは一旦落ち着いて翻訳を行いましょう。相手がより理解しやすい言葉に置き換えることが出来れば、あなたの伝えたい想いは必ず相手に伝わるでしょう。
相手に伝えるための翻訳のコツ
翻訳のメリットはお解りいただけたと思うので早速手順をお伝えしていきます。翻訳の技術を高めて快適なコミュニケーションを手に入れましょう。
手順① 言葉の意味を再認識する
自分が普段使っている言葉には自分なりの固定した意味が出来ています。「元気」の意味に多様性があったように自分の使っている言葉にはさまざまな意味があることを再認識して下さい。
すると意味が固定してしまった言葉にも実はたくさんの言い換え方があると気づくことが出来ます。相手が発した言葉にも同じく固定した意味があり自分の受け止めた言葉の意味とはズレがあるという可能性も認識しておきます。
手順② 相手を研究する
相手に合わせて翻訳するためには相手を研究することが大切です。しっかり意志疎通したい相手がいたら自分に対する言葉だけに注目するのではなく、誰に向かってどんな言葉を使って話すのか研究します。自分以外の人との会話は客観的に分析することが可能です。
相手の分析例
- 肯定的な言葉を使って話す(ボジティブ思考で相手にも前向きさを求めている)
- まず否定的な言葉から入る(常に相手よりも強い立場であると示そうとしている)
- 名詞が多い(名詞に含まれるイメージも同時に伝わっていると思っていて説明不足)
- 形容詞が多い(動詞も形容詞のように使い抽象的な表現が多く解りにくい)
- 結論から先に言う(シンプルだが理由の説明が足りずに伝わらないことも多い)
- 結論を後に言う(回りくどい印象だが同じタイプの人とは意思疎通がスムーズ)
などなど。あくまで例であり人それぞれ受け止め方や分析結果は違います。相手の言葉の使い方に意識をクローズアップしていくことが重要なのです。
手順③ 言葉の共通項を見つける
人との会話を聞くことで意思疎通が難しい人ほど自分で決めた固定した意味を持つ言葉を使って話す傾向があることにも気づきます。分析した傾向と自分の使っている言葉の傾向をすり合わせ、お互い近い意味を持っているような共通項となる言葉を見つける。意味がすべて一致しなくても相手に伝わりやすい言葉選びが出来れば、言葉の置き換えが可能になり「翻訳」することができます。
2つのシチュエーションを例にします。
例① お互いが苦手な単語を避ける
「元気?」「うん、元気。」という会話があったとしましょう。
「元気」と言う言葉にあまりポジティブな印象を持っていない2人。元気と効かれているということは、逆に今のあなた心配ですという感情が見えるようで苦手な方は多いでしょう。このような場合に分析をして、お互いの共通項となる言葉を選び翻訳して会話していきます。
「元気?」を「大丈夫?」に置き換えて声かけ、
「大丈夫?」「うん、かろうじて。」ネガティブな会話にも聞こえますが、2人にとっては心地の良い優しい会話になるのです。
例② 先輩からの指導の意味
仕事の先輩が「もっと元気に!」と指導してくれました。後輩は「はい。」と返事をします。
しかし、後輩側で「元気」のイメージはが違った場合には、先輩の言葉は正しく後輩には伝わりません。後輩が「元気=健康であること」としていたら、何をしていいのか困りますよね。
先輩はいつも大きな声で話すようにという意味で、静かな同僚に「元気だして!」と声をかけていました。後輩がしっかりと意味をくみ取り「元気=大きな声ではきはきと」と翻訳して仕事に取り組めれば成果を上げられるというわけです。
まとめ
改めて整理してみると普段から意志疎通しやすい人は「翻訳」の技術が高い人だと気づくでしょう。実は「翻訳」と名付けなくても自然と実践できている人はいます。
しかし多くの人がコミュニケーションに悩みを抱えている。一度しっかり定義づけして言葉に対する認識や相手に対する認識を新たにすることで会話の感度を上げていく方法が「翻訳」なのです。ぜひ実践してみて下さい。