神社参拝が終わったあと、ちょっと興奮したこともあり家に帰って休憩することに。午前中は特に予定もなかったので、ゆったり気分でコーヒーを淹れていたのです。
お気に入りの椅子に座って、深呼吸。引っ越してきて新しくなった部屋。子供と夫と一緒に近くでキャンプできるようにと買った、折りたたみ式のアウトドアチェアにゆったりと腰をおろす。秋の涼しい風が、わずかに開いた窓のすき間から私の肌をなでる。
神社参拝の程よい疲労感もあって、子供を寝かしつけて、ちょっと休憩。まぁ家事が途中ではあったものの、気持ちよさにウトウトしてしまった。この季節ののんびりした時間が好きだ。
すると、再び声が聞こえてきた。
「じゃあ、早速はじめようかね。」
目を開けてみると、目の前には輝いて見えるちょうど私と同じ位の背丈の女性が立っていた。見るからに良さそうな絹らしい光沢ある着物を着ています。黒く滑らかな美しい髪の毛に、神社で巫女さんがつけているようなキラキラした髪飾り。女性が動くと、きらりと光って揺れています。
立ち姿だけでも美しいとわかる女性が目の前いる状況に、置かれている状態が全く理解できなかった。
すると、女性は話はじめました。
「先ほどは、参拝してくださりありがとうございました。ここはあなたの夢の中です。しばらくはこちらで色々お伝えしていきますね。」
なるほど、どうやら神社に行かなくても、この世のしくみについて講義をしてくれるそう。
生まれて半年の子供がいることもあり、毎日決まって神社に行くのは難しいと感じていた私。さすがにこれは、ありがたい。
「よろしくお願いします。」
法則1『循環の法則』について
「さっそく、はじめていきましょう。ちょっと移動するね。」
お姫様のような着物の女性は、2回パンパンと手を打った。すると、目の前の景色が一瞬で緑色になった。
何ごとかと思って、まずは落ち着くように深呼吸。周りを見渡してみると、ここはどこかの小さな滝。どうやら夢の中で女性は自由に場所を移動できるということだ。
この滝はちょうど子供が入って遊べる位の、浅い小川が流れていて涼しく心地よい。滝から出てくる、髪が揺れる程度の風が吹いているのを感じる。
お水を触ってみた。この近くで湧いているお水なのだろう、お水の温度は秋とは思えないほど冷たい。
私は、女性へ声をかけた。
「始める前に、ちょっと気になる事があるのでいいですか。」
「なんでしょう。」
「あなたのことをどのようにお呼びすれば良いですか。」
「そうですね。最近呼ばれて嬉しかったので、師匠と呼んでください。先を生きているという先生ではないですし、シンプルに理をお伝えしていくだけですしね。」
この世の中に存在するものはすべて動き続けていることはわかる?」
「動きについて考えたことありませんでした。ん~、何かあるかな。思いついたのは、岩とか硬いもの。数億年とか変わらずに残っていると思います。」
「まあ、そう見えますよね。ただこれも実は動きがあります。岩そのものは風化という現象で砂のように小さくなっていきます。それに、地球の地面だって大陸プレートが動いていたり、日本だったら地震も起こりますよね。」
「そっかぁ。じゃあコンピュータのデータとかはどうですか?」
「データ自体はただの信号の組み合わせよ。そのもの自体は文字と一緒で個別では意味をなさないものなの。それに、機械自体はもちろん岩石なんかよりはやく壊れちゃうよね。」
師匠は明るい調子で教えてくれた。
「学校で平家物語の『祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。』と教わりましたがそれですか。」
「そうです。あの本の冒頭部分はそのこの世に流れている循環の法則について伝えているものです。社会であったり、人間関係はもちろんのこと、すべてのものは同じ状態は維持できないのです。」
「変化が起こるというのはわかりますが、これを生活にどう生かしていけばよいのかが難しいですね。」
「そうですね。まず使いやすいのが考え方の部分でしょう。たとえば、付き合いで嫌な気分になることがありますよね。そんなときに、その感情、人間関係、とらえ方などすべて今とは異なるものになっていくのです。」
難しそうな顔をしている私の表情を読み取ったのか、師匠は続けました。
「変化が当たり前に起こるということを心の底から理解できていると、目の前に起こることに一喜一憂することがなくなるのです。」
「まぁ、月に一度はどうしても面白くない日があるのですけど、今までもずっと同じような気分が続いているということもないですもんね。おっしゃる通りな気もします。」
「そうね。もし親子関係とかなかなか変わらないと感じてしまうものがあるかもしれません。それでもお互いの年齢は日に日に変わっているし、変わることが難しいものも実は少しずつ変わっているものなのよ。」
私は気になったことを聞いてみることにしました。
「親との関係があったのでお聞きしますが、老化は肌が柔らかくなったり、垂れてきたりします。体質も変わっているようには思うのですが、循環しているのかというと違うような気がします。ただの変化であって循環は意味が違うのではないでしょうか。」
「身体ももちろん循環の法則にたがうことなく、めぐるものです。一番わかりやすいところでは血液。生命をつかさどる心臓もそのための器官になります。また人間は食べ物を通じて世界ともつながっているんです。毎日食べ物を摂取しているでしょう。ここで得た栄養を成分に身体をつくったり命の維持活動を継続させているんです。」
「そうですね。」
「新陳代謝という単語を聞いた事があるでしょう。代謝とは古いものと新しいものが入れ替わるという意味。新しく摂取した世界から入ってきた栄養素を取り入れ、不必要になったものを世界へ。こうして循環が成立しているのです。」
「なるほど!確かに。老化というのはより大きな時間で見たときの変化。毎日の変化としては、確かに身体にあるものが入れ替わっているんですね。面白い。」
「循環が当たり前にあるものと思っておくことで、現状から感じられる未来の不安や後悔は良くなることが想像できるようになります。生きる楽しさをもっと感じるために、基本となる循環の法則を知っておくことが大切なのですよ。」
「私も子育てしていて、娘が思うようにおもちゃを片付けてくれなくてモヤモヤもあります。幼稚園に行ったときに片付けられなかったら困るなと思ってのこと。よくよく考えると、大人になった時に片付けができないということはないのだから私が今イライラする事なんてないのですよね。」
「まだ来ていないことを想像するよりも、本来の目的を思い出したほうがいいね。子供をよりよく育てたいと思ったら、一緒にいる時間を丁寧に味わうことの方が大切なのですよ。」
「循環の法則だけでなく、私の子育ての話まで付き合ってくださりありがとうございます。」
師匠は私の様子をみて微笑んでいた。
「今日のお話はこれくらいにしておきましょうね。」
師匠は瞬間移動を見せてくれたように、再び手を2回打った。目の前が白く光に包まれて、気付くと私は自分の部屋の椅子に座っていることに気がついたのだった。
神様からの法則講義の一覧
- 法則1 循環の法則(流れをとらえる)
- 法則2 分極の法則(ものごとの生まれ方)
- 法則3 好転の法則(すべてが良いことになる)
- 法則4 反射の法則(与えたものと受け取るものの関係)
- 法則5 反動の法則(不安の感情の本当の使い方)
- 法則6 同調の法則(同じものは引き合う)
- 法則7 調節の法則(試行錯誤の最適化)
- 法則8 エネルギー保存の法則(本気の強さ)
- 法則9 行動結果の法則(やるべきこととその価値について)
- 法則10 唯一現在の法則