天之御中主神(あめのみなかぬし)とは?
天之御中主神は日本神話における最高神で、宇宙の始まり、もしくは宇宙そのものを象徴する存在だと考えられています。「天」は宇宙、「御中」は真ん中、「主」は主人という意味。つまり天之御中主神は、宇宙の中心に存在し、主人として支配をおこなう神様ということになります。しかし、天之御中主神が登場する神話は、誕生に関してのものだけで、何かをおこなったというエピソードはまったく残されていません。そのため、かつては一般に知られる存在ではなく、盛んに信仰されるようになったのは比較的最近のことです。
天之御中主神に関わる神話
世界に初めて天地が現れたとき、高天原に三柱の神様が生まれました。その中で最初に生まれたとされるのが天之御中主神です。天之御中主神に続いて、高御産巣日神と神産巣日神が誕生。この三柱の神様は造化三神と呼ばれています。造化三神は独神(ひとりがみ)、つまり男女一対ではなく単独の存在として生まれた神様。生まれてすぐに姿を隠し、地上に現れることはなかったそうです。造化三神の次に生まれたのが、宇摩志阿斯訶備比古遅神と天之常立神の二柱。このころはまだ、くらげのように漂っていた国土に、葦が萌えあがるように現れたといいます。やはり独神のまま姿を隠し、その後の神話に登場することはありません。五柱の神様は別天津神と呼ばれ、高天原の神々である天津神の中でも特別な存在だとされています。
その他のエピソード
天之御中主神を祀る神社が現れたのは中世以降のこと。天之御中主神をご祭神とする主な神社は妙見社や水天宮です。北極星を最高神として神格化した北極星信仰と、菩薩信仰が合わさってできたのが妙見信仰。天之御中主神は、日本神話において最高神とされ、宇宙の中心の神様であることから、妙見信仰と結び付けられ妙見菩薩と同一視されるようになりました。そのため、明治時代に神道と仏教を分ける政策がとられたときに、妙見社では妙見菩薩に代わって天之御中主神がご祭神となったのです。さらにこのとき、神仏習合の神様である水天を祀っていた水天宮でも、天之御中主神が祀られることになりました。水天がもともとはインドの最高神ヴァルナだったことから、日本神話で同等の存在にあたる天之御中主神に置き換えられたようです。