高天原から天下った瓊瓊杵命(ニニギノミコト)は、地上でとても美しい女性に出会い、求婚します。
その非常に美しい女性の名前は木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)。
日本全国に1300社あると言われる、浅間神社の御祭神です。
2柱の神さまは結婚を許されましたが、その結婚は木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)の家族にわだかまりを生んでしまいました。
木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)はどんな神さまで、どんな神話があるのでしょう?
木花之佐久夜毘売はどんな神さま?
日本全国に1300社あると言われる浅間神社。
そのほとんどの御祭神は、木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)です。
『古事記』によれば、木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)という名前は別名で、本名は神阿多都比売(かむあたつひめ)と言うのだとか。
「阿多」というのは地名で、「かむあたつひめ」という名前は「神聖な阿多の巫女」という意味だそうですよ。
木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)は国津神である大山津見神(オオヤマツミノカミ)の娘で、非常に美しい女性だったのです。
富士山の神は浅間大神(あさまのおおかみ)という火山の神が祀られますが、木花之佐久夜毘売も富士山の神として祀られてきており、これらは同一の神ともされます。
天孫邇邇芸命の妃。大山津見神の娘。石長比売の妹。火照命(海幸彦)、火須勢理命、火遠理命(山幸彦:日子種穂手見命)の母。
御神格
全国の浅間神社の祭神、酒造の神
ご利益
ご利益は、火難除け、子授け、安産、農業・漁業の守護など多岐に亘り、多くの人からそのご神徳を慕われ、祀られてきました。
山火事鎮護・五穀豊穣・縁結び・子授け・安産
木花之佐久夜毘売の結婚にまつわる神話は?
高天原から天下った、天照大御神(アマテラスオオミカミ)の孫・瓊瓊杵命(ニニギノミコト)。
ある日海岸で、非常に美しい女性に出会い、一目惚れして求婚します。
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- その女性は、国津神である大山津見神(オオヤマツミノカミ)の娘で木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)でした。
木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)は「父に聞いてみませんと」と即答を避け、大山津見神(オオヤマツミノカミ)に相談します。
すると、大山津見神(オオヤマツミノカミ)は大喜び。「天照大御神の孫である天津神との婚姻とは、なんと喜ばしいことか」と結婚を快諾しました。
さて、結婚を許された瓊瓊杵命(ニニギノミコト)は、花嫁の到着を待っていたのですが・・・。
何故か、木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)だけではなく、姉の石長比売(イワナガヒメ)も一緒に嫁いできたのです。
しかも、花のように美しい木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)に比べて、石長比売(イワナガヒメ)は醜い姿形をしていました。
瓊瓊杵命(ニニギノミコト)は醜い石長比売(イワナガヒメ)を疎んじて、父親である大山津見神(オオヤマツミノカミ)の元に送り返し、木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)だけを妻に迎えます。
娘を送り返された大山津見神(オオヤマツミノカミ)は、激しく怒りました。
大山津見神(オオヤマツミノカミ)が娘2人を同時に嫁がせたのには、理由があったのです。
大山津見神(オオヤマツミノカミ)は、瓊瓊杵命(ニニギノミコト)の繁栄を祈願して花のように美しい木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)を、岩のように固く長い永遠の生を祈願して石長比売(イワナガヒメ)を嫁がせたのでした。
ところが、瓊瓊杵命(ニニギノミコト)は石長比売(イワナガヒメ)の容姿を疎んじて送り返してしまったために、その命は花のようにはかなくなってしまったのです。
こうして、天照大御神(アマテラスオオミカミ)の子孫である歴代の天皇も、寿命が短くなってしまったのでした。
木花之佐久夜毘売の出産にまつわる神話は?
父・大山津見神(オオヤマツミノカミ)、姉・石長比売(イワナガヒメ)との間にわだかまりを残した瓊瓊杵命(ニニギノミコト)と、木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)は結婚します。
一夜をともに過ごしたのち、木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)は身ごもりました。
木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)は喜び、身ごもったことを瓊瓊杵命(ニニギノミコト)に伝えたのですが・・・。
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- 「たった一夜をともにしただけで身ごもるはずがない、それは国津神の子供だろう」と、瓊瓊杵命(ニニギノミコト)にあらぬ疑いをかけられてしまったのです。
激怒した木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)は、「この子が国津神の子供なら、生む時に無事ではない。天津神の子供なら無事でしょう」と言い、出入り口のない産屋を建ててその中に入りました。
そして、いよいよ出産を迎える時に産屋に火を放ったのです。
燃え盛る炎の中で、木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)は3柱の子供を無事に産み落としました。
一番火が強く燃えていた時に生まれた子供を火照命(ホデリノミコト)、火が弱くなり始めた時に生まれた子供を火須勢理命(ホスセリノミコト)、火が消えた時に生まれた子供を火遠理命(ホオリノミコト)と言います。
『古事記』に出てくる海幸彦・山幸彦の物語は、皆さんご存知ですよね?
木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)の生んだ3柱の子供のうち、火照命(ホデリノミコト)が海幸彦、火遠理命(ホオリノミコト)が山幸彦です。
火遠理命(ホオリノミコト)は、初代神武天皇のお祖父様にあたる神さまですよ。
燃え盛る炎の中で無事に出産を果たしたことから、木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)のご利益は火難除け、子授け、安産と言われるようになりました。
やがて、何度も噴火を繰り返す富士山を、火難除けのご利益を持つ木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)に鎮めてもらおうという信仰が生まれます。
こうして、富士山をご神体とする浅間大社で木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)が祀られるようになったのです。
木花之佐久夜毘売が祀られている主な神社
木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)が祀られている神社の代表的なものをご紹介します。
富士山本宮浅間大社(ふじさんほんぐうせんげんたいしゃ)
静岡県富士宮市に鎮座する神社で、全国の浅間神社の総本社。創建は、第11代垂仁天皇の御代と言われています。
市街地に本宮、富士山の頂上に奥宮が鎮座。富士山へ登ったことがある方はご存知でしょう。
本宮の社殿は徳川家康が造営したもので、国の重要文化財に指定されています。
木花神社(きばなじんじゃ)
宮崎県宮崎市に鎮座する神社。
境内に木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)が産屋に使ったと言われる無戸室(うつむろ)の跡と産湯に使ったと言われる霊泉桜川が境内に残っています。
高千穂神社(たかちほじんじゃ)
宮崎県西臼杵郡に鎮座する神社。
瓊瓊杵命(ニニギノミコト)が天下った天孫降臨の地だと言われています。
霧島神宮(きりしまじんぐう)
鹿児島県霧島市に鎮座する神社。
もうひとつの天孫降臨の地として知られています。創建は第29代欽明天皇の御代・540年と言われる古い神社です。火山の噴火でたびたび社殿が焼失し、現在地に建てられたのは江戸時代・1715年(正徳5年)のことでした。
都萬神社(つまじんじゃ)
宮崎県西都市に鎮座する神社。
この神社の周辺には、瓊瓊杵命(ニニギノミコト)と木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)が新婚生活を送った伝承地があります。
また、都萬神社から徒歩30分ほどの距離にある西都原古墳群(さいとばるこふんぐん)には、2柱の神さまの墓として考えられている古墳もあるので併せてお参りすると良いでしょう。
男狭穂塚古墳(おさほづかこふん)が瓊瓊杵命(ニニギノミコト)、女狭穂塚古墳(めさほづかこふん)が木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)の古墳なのだとか。
その他の主祭神の神社
北口本宮浅間神社
箱根神社
子安神社(伊勢神宮内宮 所管社)
別名
木花咲弥姫命 このはなさくやひめのみこと
神阿多都比売 かむあたつひめ
豊吾田津媛命 とよあたつひめのみこと
神吾田鹿草津姫命 かむあたかあしつひめのみこと
許乃波奈佐久夜比売命 このはなさくやひめのみこと
酒解子神 さかとけのみこがみ
富士山周辺の浅間神社(せんげん・あさま)
社名 | 住所(クリックでマップへ) |
富士山本宮浅間大社 ふじさんほんぐうせんげんたいしゃ | 静岡県富士宮市宮町1−1 |
北口本宮冨士浅間神社 きたぐちほんぐうふじせんげんじんじゃ | 山梨県富士吉田市上吉田 5558 |
甲斐国一宮 浅間神社 あさまじんじゃ | 山梨県笛吹市一宮町一ノ宮1684 |
山宮浅間神社 やまみやせんげんじんしゃ | 静岡県富士宮市山宮 |
冨士御室浅間神社 ふじおむろせんげんじんじゃ | 山梨県富士河口湖町勝山3951 |
村山浅間神社 むらやませんげんじんじゃ | 静岡県富士宮市村山1151 |
人穴浅間神社 ひとあなせんげんじんじゃ | 静岡県富士宮市人穴 |
須山浅間神社 すやませんげんじんじゃ | 静岡県裾野市須山 |
河口浅間神社 かわぐちあさまじんじゃ | 山梨県南都留郡河口湖町 |
富知六所浅間神社 ふじろくしょせんげんじんじゃ | 静岡県富士 |
須走浅間神社 すばしりせんげんじんじゃ | 静岡県駿東郡小山町須走 |
富知神社 ふくちじんじゃ | 静岡県富士宮市朝日町 |
富士浅間神社 ふじせんげんじんじゃ | 山梨県富士吉田市新倉 |
小室浅間神社 おむろせんげんじんじゃ | 山梨県富士吉田市下吉田 |
静岡浅間神社 しずおかせんげんじんじゃ | 静岡県静岡市宮ヶ崎町 |
まとめ
日本全国にある浅間神社の御祭神・木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)。
非常に美しい女性で、高天原から天下った瓊瓊杵命(ニニギノミコト)に見初められ、嫁ぎました。結婚後、一夜にして身ごもったことを夫に疑われ、潔白を証明するため、燃え盛る炎の中で無事出産を遂げます。
このことから、火難除け、子授け、安産のご利益があるとされ、それ以外に農業・漁業の守り神など、そのご利益はとてもたくさん。
木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)は、それだけ庶民から慕われる神さまだということでしょう。子授け・安産を願う方は、ぜひご自宅近くの浅間神社にお参りしてくださいね。